注意すべき
自覚的副作用とその対応

色素沈着

投与後2~3週目頃より顔面、爪、手、足などに色素沈着が発現することがあります。現在のところ治療法は確立しておらず、投与中は症状が軽快することはありませんが、投与中止により多くの症例でやがて軽快しています。

発現率

ティーエスワンの承認時までの臨床試験、使用成績調査及び市販後臨床試験における色素沈着の発現率は下表のとおりでした。
単独投与、CDDP(シスプラチン)併用投与ともにほぼ同じ発現率でした。

副作用 承認時までの臨床試験 使用成績調査(単独投与+併用投与) 市販後臨床試験(胃癌:SPIRITS)
単独投与
(751例)
CDDP併用投与
(55例)
胃癌
(3808例)
頭頸部癌
(375例)
非小細胞肺癌
(1669例)
単独投与
(150例)
CDDP併用投与
(148例)
色素沈着 197例
(26.2%)
13例
(23.6%)
557例
(14.6%)
24例
(6.4%)
56例
(3.4%)
60例
(40.0%)
53例
(35.8%)

発現時期

胃癌のティーエスワン使用成績調査での発現時期(n=557例)は投与開始後3週目が最も多くそれ以降徐々に減少し、2コース目(7~12週)での発現もかなりみられ、約30%は第2コースでの発現でした。初発までの期間の中央値は胃癌の使用成績調査で15日(n=248例)、後期臨床第Ⅱ相試験では31日(4-592日)(n=134例)でした。

好発部位

顔面や手、足、爪等の四肢末端部及び全身に認められました。

処置

色素沈着に対する治療法は確立していませんが、投与を中止することにより多くの症例で症状は徐々に回復・軽快しています。また、胃癌の使用成績調査において色素沈着を認めた症例のほとんどは無処置でした。

転帰

胃癌のティーエスワン使用成績調査では発現例(n=557例)のうち未回復症例が56.7%と多いが、これは対象が進行・再発癌であり胃癌治療を優先し、色素沈着発現後も継続投与を行った症例が多いためと考えられます。回復・軽快までの期間の中央値は、胃癌の使用成績調査では29日(n=248例)、後期臨床第Ⅱ相試験では40日(7-406日)(n=56例)でした。

色素沈着 発現例数 回復・軽快 未回復 不明
使用成績調査 胃癌 557例
(14.6%)
42.0% 56.7% 1.3%
頭頸部癌 24例
(6.4%)
70.8% 25.0% 4.2%
非小細胞肺癌 56例
(3.4%)
53.6% 41.1% 5.4%

(調査票回収時の転帰)

継続投与

エスワンタイホウを継続投与している間は軽快は難しいため、カバーメイクなどの美容、心理面でのケアをするとともに、日光にあたると色素沈着は増悪することがあるので、日焼け止めクリームの使用を勧め、日光に当たり過ぎないようにするなどの指導が必要です。

患者さんへの事前説明

顔や手が黒くなってくると患者さんは不安になりエスワンタイホウの服用を止めてしまう可能性があります。そのため、エスワンタイホウを投与する前に、患者さんに顔や手が黒くなる可能性があることを十分説明することが大切です。