悪心・嘔吐
悪心・嘔吐は投与開始早期から発現することが多く、患者にとって最もつらい副作用の一つです。処置としては、メトクロプラミド、ドンペリドンなどの制吐剤を投与します。エスワンタイホウでは悪心・嘔吐に対する予防投与が行われることはほとんどありませんが、状況に応じてデキサメタゾン、メトクロプラミド、ドンペリドンなどを併用投与することも必要です。また、患者にこれらの薬剤を処方して持たせ、発現したら直ぐに服用させ遷延化しないようにするなどの早期対応が重要です。なお、嘔吐時には脱水に注意することも必要です。
発現率
ティーエスワンの承認時までの臨床試験、使用成績調査及び市販後臨床試験における悪心・嘔吐の発現率は下表のとおりでした。悪心、嘔吐ともに単独投与に比べCDDP(シスプラチン)併用投与で著明に増加しています。
副作用 | 承認時までの臨床試験 | 使用成績調査(単独投与+併用投与) | 市販後臨床試験(胃癌:SPIRITS) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
単独投与 (751例) |
CDDP併用投与 (55例) |
胃癌 (3808例) |
頭頸部癌 (375例) |
非小細胞肺癌 (1669例) |
単独投与 (150例) |
CDDP併用投与 (148例) |
|
悪心 | 207例 (27.6%) |
36例 (65.5%) |
387例 (10.2%) |
27例 (7.2%) |
183例 (11.0%) |
39例 (26.0%) |
99例 (66.9%) |
嘔吐 | 95例 (12.6%) |
21例 (38.2%) |
347例 (9.1%) |
21例 (5.6%) |
86例 (5.2%) |
21例 (14.0%) |
54例 (36.5%) |
発現時期
胃癌のティーエスワン使用成績調査では、悪心・嘔吐の発現は1週目が一番多く、その後徐々に減少し4週間以内の発現例は全体(n=734例)の72.3%であり、初発までの中央値は10日(n=593例)でした。また、単独投与の後期臨床第Ⅱ相試験における初発時期の中央値は悪心15.0日(1-246日)(n=114例)、嘔吐23.0日(2-271日)(n=63例)でした。
処置
エスワンタイホウを休薬するとともに、メトクロプラミド、ドンペリドンなどの制吐剤投与を行います。十分な効果が得られない場合には、更に別の薬剤を上乗せして投与します。また、嘔吐時には脱水に注意し、十分な水分摂取を促す必要があります。なお、においや食事にも配慮が必要であり、吐き気があるときには無理に食事を勧めないなどの注意も必要です。
転帰
胃癌のティーエスワン使用成績調査における悪心・嘔吐発現例のうち77.0%が回復・軽快であり、回復・軽快までの期間の中央値は15日(n=593例)でした。また、後期臨床第Ⅱ相試験における最高グレード発現から消失日までの日数の中央値は悪心13日(1-149日)(n=110例)、嘔吐7日(1-51日)(n=59例)でした。
悪心・嘔吐 | 発現例数 | 回復・軽快 | 未回復 | 不明 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
使用成績調査 | 胃癌 | 734例 (19.3%) |
77.0% | 21.8% | 1.2% | |
頭頸部癌 | 48例 (12.8%) |
85.4% | 12.5% | 2.1% | ||
非小細胞肺癌 | 悪心 | 183例 (11.0%) |
94.0% | 3.8% | 2.2% | |
嘔吐 | 86例 (5.2%) |
95.3% | 3.5% | 1.2% |
(調査票回収時の転帰)
対策
悪心・嘔吐対策としては、エスワンタイホウ投与開始時より経過観察を十分に行い、発現早期よりの対策を実施することが重要です。エスワンタイホウによる悪心・嘔吐に対して、予防投与されることはほとんどありませんが、軽度とはいえかなり高い比率で発現することから、神経質な方や悪心・嘔吐発現後の再投与時にはメトクロプラミドなどの制吐剤を併用投与することを考慮する必要があります。また、患者さんにこれらの薬剤を処方して持たせ、発現したら直ぐに服用し遷延化させないなどの早期対応が重要です。なお、胃炎などにより引き起こされることがあるので、H2ブロッカーが有効な場合もあります。
再投与
悪心・嘔吐が発現し、エスワンタイホウを休薬した後の再投与時には、状況に応じて制吐剤を併用投与するなど再度発現することがないように対応することが必要です。