口内炎
口内炎は投与開始2〜3週目に多く発現しています。口内炎が発現すると、疼痛ばかりでなく、それに伴う食事摂取の意欲低下や、治療継続の意欲低下などのQOLの低下につながります。また、二次感染のリスクが高まり、症例によっては重篤な推移を示す場合もあります。投与開始時から定期的に口腔内異常の有無を必ず確認し、異常が認められた場合にはエスワンタイホウの休薬・減量を実施するとともに、疼痛軽減、炎症対策、感染予防のために、含嗽や軟膏の使用などの適切な処置を行ってください。
発現率
ティーエスワンの承認時までの臨床試験、使用成績調査及び市販後臨床試験における口内炎の発現率は下表のとおりでした。単独投与、CDDP(シスプラチン)併用投与ともにほぼ同程度の発現率でした。
副作用 | 承認時までの臨床試験 | 使用成績調査(単独投与+併用投与) | 市販後臨床試験(胃癌:SPIRITS) | ||||
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単独投与 (751例) |
CDDP併用投与 (55例) |
胃癌 (3808例) |
頭頸部癌 (375例) |
非小細胞肺癌 (1669例) |
単独投与 (150例) |
CDDP併用投与 (148例) |
|
口内炎 | 153例 (20.4%) |
14例 (25.5%) |
476例 (12.5%) |
56例 (14.9%) |
75例 (4.5%) |
32例 (21.3%) |
43例 (29.1%) |
発現時期
胃癌のティーエスワン使用成績調査での初発時期(n=476例)は投与開始後2〜3週目が多く、4週間以内に全体の70.0%の発現がみられ、初発までの期間の中央値は15日(n=422例)でした。一方、後期臨床第Ⅱ相試験における初発までの期間の中央値は28日(3〜262日)(n=100例)でした。
処置
エスワンタイホウを休薬するとともに、局所の治療薬として、軟膏ではトリアムシノロンアセトニド口腔用軟膏、デキサメタゾン口腔用軟膏など、含嗽剤等ではアズレンスルホン酸ナトリウム水和物などを使用します。また、疼痛対策として局所麻酔剤、鎮痛剤を用いる場合もあります。
転帰
胃癌のティーエスワン使用成績調査で口内炎発現例のうち回復・軽快例は87.2%であり、回復・軽快までの期間の中央値は15日(n=422例)でした。
また、後期臨床第Ⅱ相試験における口内炎の最高グレード発現から消失までの期間の中央値は13.5日(2〜99日)(n=94例)でした。
口内炎 | 発現例数 | 回復・軽快 | 未回復 | 不明 | |
---|---|---|---|---|---|
使用成績調査 | 胃癌 | 476例 (12.5%) |
87.2% | 12.2% | 0.6% |
頭頸部癌 | 56例 (14.9%) |
82.1% | 12.5% | 5.4% | |
非小細胞肺癌 | 75例 (4.5%) |
93.3% | 1.3% | 5.3% |
(調査票回収時の転帰)
対策
口内炎は予防と発現後の早期対策が重要です。エスワンタイホウ投与開始時から口腔内の清潔を保つなど積極的に口内炎の予防に努めるとともに、定期的に口腔内異常の有無の確認を行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行ってください。
参考:口腔内環境の整備
- 口腔内の清潔保持
丁寧なブラッシング(柔らかい歯ブラシ、低刺激性歯磨き剤などを用いる)、定期的含嗽(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物など)。 - 口腔内の湿潤保持
水分を十分摂取する。また、アルコールを含む含嗽水は避ける。 - 栄養状態を低下させない食事の工夫
食べやすく刺激の少ないものにする。固いものや熱いものは避け、軟らかいものを冷ましてから食べるようにする。また、酸味のあるものも避ける。
再投与
エスワンタイホウによる口内炎発現後の再投与時には減量するなどの対応が必要です。また、口内炎を再発させないために、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物などの含嗽やブラッシングなどにより口腔内の清潔を保つことが基本的な対策です。