エスワンタイホウの副作用特性

エスワンタイホウは従来の経口フルオロウラシル系薬剤とは投与制限毒性(Dose Limiting Toxicity, DLT)が骨髄抑制という点で異なり、特に臨床検査値に十分注意する必要があります。投与開始後は、2週間に1回以上の臨床検査ならびに臨床症状について問診を実施してください。異常が認められた場合には、休薬、減量、治療薬投与などの適切な処置を行ってください。

副作用発現状況

副作用一覧(単独投与)

ティーエスワン単独投与による臨床試験(前治療有乳癌症例、膵癌症例及び胆道癌症例を除く)において、副作用評価可能症例は578例であり、副作用発現率は87.2% (504例)でした。臨床上重要と考えられる副作用をMedDRA/Jで集計した結果、主な副作用は赤血球減少52.2%(302例)、白血球減少45.8%(265例)、ヘマトクリット減少44.1%(255例)、好中球減少43.9%(254例)、ヘモグロビン減少38.1%(220例)、食欲不振33.7%(195例)、悪心22.3%(129例)、倦怠感22.3%(129例)、色素沈着障害21.3%(123例)、下痢18.7%(108例)、口内炎17.1%(99例)、血中乳酸脱水素酵素増加13.7%(79例)、血中ビリルビン増加12.1%(70例)、発疹11.8%(68例)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加11.1%(64例)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加11.1%(64例)、血小板数減少10.9%(63例)などでした。(ティーエスワンの効能追加時)

副作用一覧(併用投与・非小細胞肺癌)

ティーエスワンとシスプラチンとの併用試験において、副作用評価可能症例は55例であり、全例に何らかの副作用が発現しました。主な副作用は白血球減少52.7%(29例)、好中球減少65.5%(36例)、ヘモグロビン減少90.9%(50例)、血小板減少60.0%(33例)などの骨髄抑制、AST(GOT)上昇14.5%(8例)、ALT(GPT)上昇14.5%(8例)、血清ビリルビン上昇29.1%(16例)などの肝障害、食欲不振78.2%(43例)、悪心65.5%(36例)、嘔吐38.2%(21例)、下痢34.5%(19例)、口内炎25.5%(14例)などの消化器障害と色素沈着23.6%(13例)、疲労45.5%(25例)などでした。(ティーエスワンの効能追加時)

「警告」、「禁忌」、「効能又は効果」、「効能又は効果に関連する注意」、「用法及び用量」、「用法及び用量に関連する注意」、「特定の背景を有する患者に関する注意」、「臨床成績」の項をご確認ください。

主な臨床検査値異常の発現及び回復状況(ティーエスワン後期臨床第Ⅱ相試験)

単独投与において重要と考えられた副作用について、胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌(単独投与)、手術不能又は再発乳癌、膵癌及び胆道癌の後期臨床第Ⅱ相試験の453例を対象として副作用の発現時期および回復時期に関する解析を行いました。
各基準値未満に至った中で最も低下した臨床検査異常値において、その当該クール開始から最低値に至るまでの期間の中央値(範囲)の検討では、3,000/mm3未満の白血球減少を認めた92症例で27日(4~43日)、8.0g/dL未満のヘモグロビン減少を認めた29症例で25日(5~43日)、7.5×104/mm3未満の血小板減少を認めた28症例で24日(9~51日)でした。
一方、そのうち上記基準以上へ回復したことを確認できた症例の最低値から回復までの期間を検討した結果、白血球数の回復が確認された85例では回復に要した日数の中央値(範囲)は7日(1~93日)でした。 また、ヘモグロビンの回復が確認された24例では回復に要した日数の中央値(範囲)は5.5日(1~21日)、血小板数の回復が確認された25例では回復に要した日数の中央値(範囲)は6日(1~46日)でした。

臨床検査項目 発現
例数
最低値:中央値
(範囲)
最低値までの期間:中央値
(範囲)
回復確認
例数*
回復までの期間:中央値
(範囲)
白血球減少 92例
(20.3%)
2,560/mm3
(300~2,990)
27日
(4~43日)
85例 7日
(1~93日)
ヘモグロビン減少 29例
(6.4%)
7.3g/dL
(3.5~7.9)
25日
(5~43日)
24例 5.5日
(1~21日)
血小板減少 28例
(6.2%)
6.7×104/mm3
(1.0~7.4)
24日
(9~51日)
25例 6日
(1~46日)

*:未回復例は癌死等により確認できず。

白血球減少の異常発現までの期間

Image placeholder

グレード:日本癌治療学会旧基準〔日癌治、21(5) 943-953(1986),日癌治、32(1)61-65(1997)〕による。
手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌では、NCI-CTC ver.2(1998日本語訳JCOG版)による。

主な自他覚的副作用の発現及び回復状況(ティーエスワン後期臨床第Ⅱ相試験)

単独投与において臨床上重要と考えられた副作用について、胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌及び胆道癌の後期臨床第Ⅱ相試験の453例を対象として主な自他覚的副作用の発現時期および回復時期に関する解析を行いました。
また、臨床所見において薬剤との関連性を重視し、副作用と判定された下痢が発現した100例のティーエスワン投与開始から初発までの時期の中央値を検討した結果、24.5日(2~189日)、発疹が発現した67例では21日(2~248日)、口内炎が発現した100例では28日(3~262日)でした。
一方、各症状の最高グレードから消失するまでの期間の中央値(範囲)を検討した結果、下痢の回復が確認された95例で9日(1~62日)、発疹の回復が確認された63例で14日(2~254日)、口内炎の回復が確認された94例で13.5日(2~99日)でした。

臨床所見 発現例数 初発までの時期:中央値(範囲) 回復確認例数* 消失までの期間:中央値(範囲)
下痢 100例
(22.1%)
24.5日(2~189日) 95例 9日(1~62日)
発疹 67例
(14.8%)
21日(2~248日) 63例 14日(2~254日)
口内炎 100例
(22.1%)
28日(3~262日) 94例 13.5日(2~99日)

*:未回復例は癌死等により確認できず。

下痢発現までの期間

Image placeholder

グレード:日本癌治療学会旧基準〔日癌治、21(5) 943-953(1986),日癌治、32(1)61-65(1997)〕による。
手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌では、NCI-CTC ver.2(1998日本語訳JCOG版)による。

胃癌を対象としたティーエスワンの使用成績調査におけるクレアチニンクリアランス値の推定値別の副作用発現率

胃癌を対象としたティーエスワンの使用成績調査において、投与前の血清クレアチニン値、性別、年齢および体重からCockcroft-Gault式注)を用いて算出したクレアチニンクリアランス値(Ccr推定値)別に副作用発現率を集計した結果、Ccr推定値が低値症例ほど副作用発現率が高く、かつその程度が重度化していました。また、減量(主に1段階)して投与を開始した症例においては、基準量投与開始例に比し副作用発現率が低下していました。

Ccr推定値
(mL/min)
基準量投与開始症例 減量投与開始症例
副作用発現率 高度(グレード3)以上
副作用発現率
副作用発現率 高度(グレード3)以上
副作用発現率
80≦ 79.2%
(835/1054)
26.8%
(282/1054)
70.7%
(224/317)
24.3%
(77/317)
50≦ <80 80.8%
(1087/1345)
32.3%
(434/1345)
71.7%
(309/431)
26.0%
(112/431)
30≦ <50 87.4%
(319/365)
42.5%
(155/365)
79.9%
(123/154)
33.8%
(52/154)
<30 90.0%
(18/20)
75.0%
(15/20)
82.4%
(14/17)
47.1%
(8/17)

注)Cockcroft-Gault式
Ccr推定値=((140—年齢)×体重(kg))/(72×血清クレアチニン(mg/dL))
(女性の場合はさらに得られた値を0.85倍する)

「警告」、「禁忌」、「効能又は効果」、「効能又は効果に関連する注意」、「用法及び用量」、「用法及び用量に関連する注意」、「特定の背景を有する患者に関する注意」、「臨床成績」の項をご確認ください。